ランニングをする上で大会で結果を出したい。またはダイエットをしたいなど、それぞれ考えることがあるでしょう。ランニング時、ランニング後の栄養をおろそかにできません。

そこで糖質補給の重要性のお話をさせて頂ます。

【運動時のエネルギー源は糖質】


運動を行うためには、当然ながら消費するエネルギー分を確保することが必要です。
糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素のうち、エネルギー源として燃えるのは主に糖質と脂質です。
運動時のエネルギー源は基本的に糖に依存しており、強度が高ければ高いほど、糖質の利用割合は増え、
血液中の糖とグリコーゲン(肝臓と筋肉に蓄えられた糖質の貯蔵形)由来の糖の挙動は運動能力を左右する重要な問題になってきます。
運動強度40%のとき(ラクに運動しているとき)には糖質と脂質の割合はおよそ半々ですが、
運動強度が90%(負荷をかけたきついトレーニング)ともなると9割が糖質由来のエネルギーとなります。
よってレースやトレーニングなど高強度の運動時ほどエネルギー源はほとんどが糖質です。

【糖質補給の必要性】


①ロードレースでは1レースで体内に蓄積されている糖質によるエネルギーをはるかに上回るエネルギーを消費するため、
補給しなければ不足します。

糖質はグリコーゲンとして、肝臓に6~10%、筋肉では0.3~0.86%ぐらい蓄積され、
通常成人男子では90~150gが肝臓に肝グリコーゲンとして貯蔵されていて、100~400gのグリコーゲンが筋肉内に存在しています。
また血中グルコースとしては、わずかに15~20gが存在するだけとなります。
つまり、蓄積されている糖質によるエネルギー源はわずかに1,500~2,000kcalを備えているにすぎません。
自転車ロードレースにおいては1レースで消費するエネルギーは4,000?5,000kcalとも言われます。
フルマラソンの場合の消費エネルギーは2,500kcalと言われています。
脂肪は体脂肪6%としても、60kgの人で3,600g、32,400kcalを有しますので、
枯渇することはまずありませんが、糖質によるエネルギーは補給しなければ不足してしまいます。

②脂肪をエネルギーとして利用するためにも糖質は必要だからです。
糖質は脂肪燃焼の際に着火材の役割をしています。
糖質なくしては脂肪を燃焼することすらできません。

③脳細胞にとって唯一のエネルギー源がグルコースのみだからです。糖質が不足すると集中力の低下、
中枢神経系から運動機能の低下、末梢神経から手足のしびれなどをまねきます。
運動中には筋肉へのグルコースの取り込みが高まりますが、
一方で肝グリコーゲンは血糖として放出され血糖値は一定に保たれています。
これは、脳細胞へのエネルギー供給が怠らないようにするためです。
脳細胞は1時間5gのグルコースを消費します。血中のグルコース濃度が低下すると低血糖状態、
いわゆるハンガーノックを引き起こします。
運動時には、まず最初に筋肉を収縮させたときに筋グリコーゲンが利用されます。
そして筋グリコーゲンが枯渇すると、血中グルコースがエネルギー源として細胞内へ取り込まれます。
そこで常に糖質を補給し、エネルギー満タン状態を作ることが必要です。

※補足※※
グリコーゲンはグルコースの貯蔵形態で筋肉と肝臓に主に蓄えられています。
おおざっぱに言えば筋肉のグリコーゲンは運動のために、肝臓のそれは血糖調節のために存在します。
絶食すると肝臓のグリコーゲンは無くなるが筋肉のグリコーゲンはあまり減りません。
両者の調節系が独立している証拠です。
グリコーゲンはグルコースが多数枝分かれして結合しているもので、
枝分かれすることにより酵素との接触のチャンスが多く、
瞬時にたくさんのグルコースを切断し、放出することができます。
グリコーゲンは運動中の糖の供給源ですので、運動中に糖質を補給し、
血糖を維持することが長時間にわたる競技においては必要とされます。

【どんな糖質をとればよいのか】


糖質の種類
マルトオリゴ糖…ブドウ糖がα-1,4結合で2?7分子結合した直鎖オリゴ糖。甘味は砂糖の0.3倍。
 小腸など体内で消化吸収されやすく、エネルギー補給に適しています。
水飴…デンプンを酸や糖化酵素で糖化してつくられた甘味料。
 ブドウ糖、麦芽糖、デキストリンの混合物。
 マルトースは砂糖に比べてカロリーが少なく、体への吸収が遅いため血糖値の上がりが緩やかです。
砂糖(スクロース)…ブドウ糖+フルクトースの結合した糖。
 小腸で加水分解され血液から体内に吸収されます。
ブドウ糖(グルコース)…脳にとっては唯一のエネルギー源で欠かすことができません。
果糖(フルクトース)…糖の中では最も甘味が強く、血糖値が上がりにくく、主に肝臓で代謝されます。 
黒砂糖…スクロースなどの糖分80%強と、カルシウム、鉄などのミネラルを含みます。


運動中は、筋肉が収縮するために血管が収縮、血圧が上昇し、
交感神経が優位の状態で、副交感神経の働きは低下しています。
一般に消化管活動は副交感神経によって促進されるため、運動中は胃腸のはたらきが低下しています。
また、早朝からのレースなども消化管の機能が低下しやすい状態となります。
胃内滞留時間についても研究がなされており、
強い運動中および運動を行った直後は胃の幽門からの内容物の放出は有意に遅いことが示されています。
胃の形態の観察からは、運動中は胃の下部よりもむしろ上部に内容物が局在することが報告されています。
さらにインスリンの分泌も低い状態となります。
長時間の運動では、交感神経が活発になり、
神経末端からはノルアドレナリン(アドレナリンの前駆体)の分泌が盛んになり、
からだは非常時だから体中からエネルギーを供給しろという状態となるので、
貯蔵されていた糖や肪が血液に出てきます。
このような状態では糖を摂取しても血糖値を下げるインスリンはあまり出ません。
したがって、運動1時間を越えてくると糖質をとってもインスリンはあまり分泌されないので
、エネルギー補給として有効となります。
そこで、消化がよく、胃の滞留時間の短く、
運動時にエネルギー源となりやすい糖質を摂取することが、効率的な糖質補給となります。
その条件を満たすのが、サイクルチャージ(メイタン)です。

【いつ・どの程度の糖質を摂ればよいのか】


では、いつ、どのくらい糖質とればいいのでしょうか?
身体の筋肉や肝臓の中にはグリコーゲンというエネルギー源が約2,000kcal程度あるので、
1時間程度の運動ではエネルギー切れになることはまずありません。
しかし1時間以上のレースや練習になると、高いパフォーマンスを維持するためには、
運動中に炭水化物の摂取が必要になります。

運動開始前は高炭水化物食を基本とします。
3時間前までに固形物、それ以降は消化時間を考慮すると
リキッド状のもので体重1㎏あたり4gを摂るのが推奨されます。 
例:体重60㎏ならば炭水化物は1gあたり約4kcalですので、60kg×4g×4kcal=960kcal。
この大部分は運動中に消費しその分、筋グリコーゲンの消費を押さえることにつながります。
走行中の補給ですが、研究によると運動中摂取した炭水化物の内、
実際に運動中のエネルギーとして使えるのは「1時間あたり30~60g(120~240kcal)が限界」**と言われています。
1時間にCCを1?2本補給する計算です。
運動後は消費エネルギーから摂取エネルギーを差し引いた不足エネルギー分を糖質:たんぱく質=3:1の割合で摂取します。

例)その日の練習予定6時間で4,000kcal程度消費すると予想される場合。
運動開始前に摂取したエネルギーは体重60kgのひとで960kcalとなります。
さらに運動中6時間で摂取カロリー量の合計が720~1,440kcal。
この場合走行時の消費カロリー4,000kcalに対して運動前と最中の摂取カロリーの合計は1,680~2,400kcalなので、
不足分は1,600~2,320kcalになります。
この不足分は筋グリコーゲンや脂肪がエネルギー源として消費されていますので、
運動後速やかにこの不足分のカロリーを適正なペースで摂取することが、筋グリコーゲン回復に必要です。

*出展:メルビン・ウィリアムス著, 樋口満監訳・『スポーツ・エルゴジェニック』・P183・大修館書店
**出展:メルビン・ウィリアムス著, 樋口満監訳・『スポーツ・エルゴジェニック』・P184・大修館書店
    Chris Carmichael AND Jim Rutberg共著・『The Time-Crunched Cyclist』・P101~P102・Velopress

【運動後の糖質補給について】


運動直後に摂取した場合は2時間後の補給に比べ、はるかに筋グリコーゲンの合成量が多くなります。
《運動直後はグリコーゲン回復のゴールデンタイム》通常、インスリンの作用がないときにはグリコーゲンは合成されませんが、
運動直後に限ってはインスリンがなくても強力にグルコースを筋肉に吸収できます。

通常グリコーゲンの原料となるグルコースは、
グルコース輸送担体(Glut4)と呼ばれるキャリアタンパク質によって血液から筋肉に吸収され、
グリコーゲンに合成される。Glut4はインスリンが存在するときにだけ筋肉への糖の吸収を促進し、
インスリンの作用がないときには働かきません。
しかし、運動直後に限ってはインスリンの作用がなくてもGlut4のトランスロケーションが起こっており、
強力にグルコースを筋肉に吸収できます。

また、糖質補給量は体重1kgあたり1gで有意に筋グリコーゲン合成を高めることができます。
体重60kgのひとなら60gの糖分=サイクルチャージ(メイタン)2袋に相当します。
サイクルチャージ(メイタン)には先程お話した通り、糖質だけでなく梅肉エキスも入っていますので、
天然のクエン酸がグリコーゲン合成を促進する作用もあり、まさに一石二鳥です。
たんぱく質(プロテイン)は糖質と同時に摂ることでさらに筋グリコーゲンの合成を促すことができます。
ちなみにその比率は3:1が有効とされています。(体重60kgの人で20g)
アイシング・マッサージなど外側からの筋肉のケアももちろん大切ですが、すばやい補給も同じように大切です。
シャワーを浴びるよりもまず先にサイクルチャージ(メイタン)を補給して、それから余裕をもって食事をしましょう。
運動後に十分な糖質を摂取せずに、喉を通らないからと水分だけ、
あるいはプロテインのサプリだけ摂取するとグリコーゲンの回復が遅れます。
グリコーゲンの回復が遅れると疲労が蓄積し、せっかくの練習も効果的とは言えません。
ステージレースなどであれば次の日のコンディションに支障をきたすことにもなりかねません。
運動後、枯渇したグリコーゲンを回復させる目的で糖質を摂取することは、トレーニングと同様に非常に重要です。

【カフェイン入り】


最後に、黒のサイクルチャージ(メイタン)と、金のサイクルチャージ(メイタン)についてです。
黒はカフェイン100mg、金はカフェイン200mgが配合されています。
カフェインの効果としては
●筋収縮を強化 
カフェインは筋肉に直接的に作用し、筋肉内の筋小胞体といわれる部分からのカルシウム・イオンの放出をうながす。
これによって、より強い筋収縮が得られ、より大きな力を発揮できるようになる。
●脳の働きを高める
 神経系の働きを抑制するアデノシンという物質があるが、
カフェインはこのアデノシンの受容体(レセプター)の作用を阻止して、
アデノシンが働かないようにするので、脳が活性化し、集中力が高まる。
●体脂肪減少を促進 カフェインを運動前にとると、グリコーゲンをエネルギー源として使う働きが抑えられ、
代わりに脂肪がより多く使われるようになることが、研究で認められている。
その結果、強度の高い運動をより長時間続けられるようになるとともに(より長時間にわたってエネルギーを補給できるので)、
脂肪をより多く燃やせるようになる。
また、アデノシンには脂肪細胞(貯蔵脂肪)からの脂肪酸の放出を抑制し、
脂肪の貯蔵をうながす作用もあるが、カフェインの摂取によってこの働きが阻害され、
脂肪酸の放出と脂肪燃焼が促進される。
といった効果が期待できますので、おすすめの使用タイミングとしてはレース終盤やアタマがぼーっとするとき、
ここぞという力を発揮したいときなどです。 
ただし、カフェインは神経系への興奮作用を持つ物質なので、
摂取による体の反応には個人差があります。
一般的には1回に200~400mg(コーヒーでとる場合は、ドリップ・コーヒー240ml中に約200mg含まれている)をとることがすすめられますが、
胃に何も入っていない状態ではカフェインの作用がすぐに、また強く現れやすくなります。
人によっては刺激が強すぎて胃に軽い不快感を引き起こすこともあるので、
事前に試して自分に合った使い方を探っていただければと思います。

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